小山清ファンのブログ
作家 小山清について書いています。
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太宰治と小山清の師弟関係
「国文学 解釈と鑑賞 1981年10月号」に桂英澄(かつらひでずみ)の「周辺人物論・太宰治をめぐる他者たち 小山清」という興味深い小論が載っている。

 太宰治が生前、小山清のことを「小山にはこわいところがあるよ」「おれより年上なのかも知れない」というようなことを言っていたエピソードがひかれ、太宰と小山の師弟関係について論じてある。

要点は以下のとおり。

・小山の太宰に対する傾倒ぶりは並たいていのものではなかったが、二人の人間としての気質は実はまったく違っていた。
・小山の深い孤独感は太宰の前においても解放し切れていなかった。そのために太宰は、小山をもてあますようなところがあった。
・小山は、謙虚で柔和な男であったが、頑固な一面もあった。
・全く違った資質をもつ小山と太宰の濃密な師弟交流には、互いに譲ることはない対決を常に孕んでいた。


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小山清と佐伯一麦
「芥川賞を取らなかった名作たち」(佐伯一麦 朝日新書 2009年)で、小山清の「をぢさんの話」についてふれられてある。佐伯氏と講談社の橋中雄二氏の対談形式である。

「をぢさんの話」が芥川賞を落選したときに、審査員のうち唯一、宇野浩二だけが本作品に触れていて、「『をぢさんの話』は、又また、新聞屋の話であり、それだけに手の入ったものであるが、数多の「新聞屋」物の中で、一番まずいのは、どういう訳か。ここらで「新聞屋」物と手を切られてはどうですか」と評している。

 橋中氏は小山とは、編集者としてはすれ違っていて一緒に仕事をしたことはなかったそうだ。

 橋中氏曰く「『小山清全集』には、太宰治が大好きだったのだと思われる作品が二作ある。これは読めば分かるはずだから、ぜひ読んでください」とのことである。


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「落穂拾ひ」の古書店
「彷書月刊 1992年1月号」(弘隆社)に古書店・落穂舎の紹介記事がある。この店は小山清の「落穂拾ひ」から名を付けている。これについて店主の栗原氏は

「名前を考えた時〈等閑堂〉とも思ったんですけど、堂は偉そうでしょ。カミさんも〈落穂舎〉を気にいってくれたし・・・・」と言っている。

店の風貌の写真が載っているが、看板には「落穂拾いの館」とでっかく書いてある。味のある構えだ。


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ついに小山清の評伝が出版!
ついに小山清の評伝が今月出版された!
『評伝 小山清』(朝文社)。定価は8250円。

著者は『小山清全集』(1999)で年譜を担当した田中良彦氏。

「太宰治の一番弟子であり、佳作の作家であった小山清。
太宰と交わした書簡をはじめ、多くの資料を駆使しながら、
彼の生涯を丹念に描き上げた力作。」だそうだ。

定価が高めなのが難だが、まさに待望の一冊だ。

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小山清の義父
『市井作家列伝』(鈴木地蔵 右文書院 2005年)によると、著者の鈴木氏は扉に「関三郎様 小山清」と書かれた『落穂拾ひ』(角川文庫 1957年)を所蔵しているらしい。神田駿河台交差点近くにある文庫本専門のK古書店の均一棚から拾い出したということだ。K古書店とは「文庫 川村」のことだろうか。

献呈相手の「関三郎」とは小山清の自裁した妻・房子の父親であろうか、と著者は書いている。

『小山清全集』(筑摩書房 1999年)には、小山と妻・房子との結婚前の往復書簡が所収されてある。これにもしかしたら、房子の父親の名が記されてあったのではないかと思い調べてみたが、それらしい記述はなかった。ちなみに、房子の略歴は次のように記されてある。

 本  籍
  神戸市須磨区潮見台町三丁目二十四
 生年月日
  昭和四年二月六日生
 出身校
  昭和十六年三月 大阪府下豊能群箕面村字枚落
             箕面尋常小学校卒業
  昭和十六年四月 大阪市立相愛高女入学
  昭和十八年十月 神戸市葺合区熊内町
             神戸市立成徳高女に転校
  昭和二十年三月 同校卒業
 後は家事のため家に居り現在に至る。

もし、「関三郎」が鈴木氏が言うとおり房子の父親であるならば、どのようないきさつで『落穂拾ひ』の文庫本が小山から贈られたのかのだろうか、また、どのような事情があってこの本が売り払われたのだろうか。

それを想像すると、私の頭の中にはなんだか悲しいストーリーがうかんでくる。

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実在した小山作品の中の女性古書店主
「近代作家自筆原稿集」(保昌正夫監修 青木正美蒐集・解説、東京堂、平13)では、小山清「津軽人太宰治」の自筆原稿の写真とともに、古書店主・青木正美氏による小山に関する興味深い記述がある。

小山作品には女性古書店主との恋愛を描いた「離合」(昭和22)、またその続編というべき「彼女」(昭和29)がある。

この女性店主の名は「離合」では「木下清子」となっており、また「彼女」では店の所在地は「A区のN町」となっている。

物語の舞台は昭和13年頃と思われるが、青木氏は昭和12〜17年の「東京古書籍組合員名簿」をめくり、この女性古書店主を探し出していく。

まず「A区のN町」は「浅草区日本堤」と推理。そこから「西川清子」という名の古書店主を発見。「離合」においては彼女を「木下清子」として登場させていたのだろう。

「近代作家自筆原稿集」ではここまでの記述で終わっているが、さらに調べてみると、青木氏が「彷書月刊」(彷徨舎)に連載していた「古本屋畸人伝」において、「女古本屋・西川清子」というタイトルで1回分の文章を書いていることが分かった。これにあたれば、さらに詳しいことが分かるかもしれない。

「女古本屋・西川清子」は「彷書月刊」の2001年3月号に掲載である。「徘徊堂」の棚に「彷書月刊」が一山あったので、その中から探し出せるかもしれない。ちなみに「古本屋畸人伝」は今秋ちくま文庫で刊行予定なのでこれを待つのもいい。

青木氏と同じ古書店業界の人で田村治芳氏も自著「彷書月刊編集長」(晶文社、2002)において、「離合」について一文を書いている。古書店主から見た古書店小説の随筆でこれも面白い。

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見つからない随筆
「新戯作者論」(庄司肇、南窓社、昭48)に収められてある小山清論の中で、参考文献として、菊田義孝氏の「文学に生き文学に死す(永遠の文学青年・小山清の生涯)」があげられており、この随筆の収録雑誌が「文芸春秋 昭和46年6月号」となっている。

さっそく、この雑誌を取り寄せたのだが、件の随筆は掲載されていない。確かに「昭和46年6月号」なのだが、おかしいなあ。庄司氏の記述が間違えているのだろう。がっかりする。

他に参考文献として、伊馬春部が書評新聞に書いた「善根のひと 小山清」という追悼記もあげられているが、残念ながら掲載新聞の年月日が書いていない。これじゃあ、調べにくいよなあ、と思うが、まあ探索していく過程も楽しいものだと思うと、別に気にするまでもないかもしれない。

小山清の死亡記事
夕方頃、徘徊堂に行く。古本を10冊ほど買い取ってもらう。棚を見ていると「別冊新評 作家の死 日本文壇ドキュメント裏面史」(新評社、昭和47年)という厚い雑誌を発見する。これはもしかして小山清の死についての記述もあるかもしれない、と目次を見るが残念ながらそれらしき記事はない。巻末の索引を見ると、小山の名前を発見。やった!と思い、頁をめくると新聞の死亡記事がそのまま載せてあった。


(昭和40・3・7 読売新聞)
小山清(作家)六日午後四時十分、急性心不全のため、東京・練馬の関町医院で死去。五十三。葬儀は八日午後十時から練馬区関町五の二〇七、第四住宅三十七号の自宅で。喪主は長男の穂太郎さん。作家の故太宰治の弟子。主な作品は「落穂拾い」「小さな町」随筆集「幸福論」など。


喪主は穂太郎君だったのか。当時、彼はまだ小学四年生。幼い喪主である。
この本は600円だったが、帳場の女性が500円にまけてくれた。

次にバンドワゴンに行く。常連らしき二人の男性と店主が談笑していた。
山の中から「BOOKMAN 第3号 特集 書棚から消えていった作家たち!!」 (イデア出版局、1983)を発見。オタク心をくすぐる内容である。300円なり。

さらにテクテク歩いて「でんちか即売会」に行く。会期が8月末までのびたそうだ。このままずっと常設即売開場にしちゃえばいいのに、と思う。「指と耳で読む 日本点字図書館と私」(本間一夫、岩波新書、1986)を買う。150円。本間氏は日本点字図書館を創立した人である。

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滝田ゆうの「落穂拾い」
「文庫で読めない昭和名作短編小説1946−1980 小説新潮5月臨時増刊」(1988)に滝田ゆうによる小山清作品(落穂拾い)の漫画(イラスト?)が掲載されていることが分かった。小山に関する探求書がまたひとつ増えた。

さらに、今日「古本・貸本・気になる本」(出久根達郎 河出書房新社 2004年)を読んでいると、こんな記述があった。

「ある古本屋の目録に、区役所に勤めていた人が、思い出話を書いていた。生活保護を扱う係の方だった。小山清が亡くなったあとで、家の整理をすることになり、蔵書を調べていた。
本の間から、『奉加帳』が出てきた。奉加帳には、お金が挟まれていた。奉加帳と照らし合わせると、寄せられたお金の全額らしい。つまり、小山清は、恐らく、人々の厚情がもったいなくて、ついに一銭も手をつけずに逝ったことがわかった。
奉加帳の扉の趣意書から判断すると、井伏鱒二氏が阿川弘之氏に骨を折ってくれるように依頼し、阿川氏が有志の間をまわったものらしい。発見されたお金は、残された子どもさんの育英資金にあてられた、と報告されていた。」

ここで気になるのは、この手記が載っている古本屋の目録とは何かということである。これまで世に出された目録はもの凄い数だろう。これを探求するのはかなり難しいような気もするけど、楽しそうだ。またまた探求書が増えた。

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孤獨な作家小山清(その2)
『新潮 1965年5月号』の「孤獨な作家小山清」(辻淳)を読む。辻氏は「木靴」同人で小山一家を見守ってきた人物であり、彼の手によるこの手記は小山の臨終の様が記されてある貴重なものである。『文壇挽歌物語』(木村彦次郎)の小山に関する記述は、この手記からの引用がかなりあると思われる。

辻氏をめぐることで、気になることがふたつある。ひとつは、小山の死後、遺児の美穂ちゃんと穂太郎くんと遊ぶ会を「木靴」同人と阿川弘之が中心となって2月に1度くらいやっていくとあるが、これは実際に行われたのだろうかということ。阿川の随筆には、小山の死後、元妻の実家に引き取られた遺児たちの消息を知らずに過ごしてきたとある(「小山清の結婚記念写真」)。

ふたつめに、井伏鱒二によると(「小山清の孤独」)、辻氏は小山清の一代記を書く目論見で小山の係累を調べているとあるが結局書かれなかったようであり、何故に実現されなかったのかということ。ちなみに辻氏は既に亡くなっているようだから(未確認情報)、幻の一代記となったわけだ。

ちなみに『新潮 1965年5月号』には、絶筆となってしまった小山の「老人と孤独な娘」も収録されている。

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小山清と蟲文庫
「女子の古本屋」 (岡崎武志、筑摩書房、2008年)読了。全部で13人の古本屋店主が紹介されているが、特に印象に残ったのは蟲文庫(岡山県倉敷市)の田中美穂さん。

田中さんは、以前、小山清の「落穂拾い」に出てくる古本屋の女性に似ていると言われたことがあったそうだ。若くして開業し、「よくひとりで始める気になったね」という客からのことばに「わたしわがままだからお勤めには向かないわ」と答える女性である。

田中さんに「似ている」といった人は誰なのかと調べてみると、「街の古本屋入門」 (コルベ出版、昭57)の著者志田三郎さん(本名:石田友三さん)であることがわかった(「早稲田古本村通信」第103号 2006年)。

石田さんは彼女に「古本屋を営む少女のお話があってね、あなたをみていると、それを連想せずにはおられないのよ」と言ったそうだ。

小説「落穂拾い」から実際に飛び出てきたような古本屋が倉敷市にに存在しているわけである。

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小山清と菊田義孝
 福岡丸善の古書即売会に行く。「私の太宰治」(菊田義孝 大光社 昭42)「太宰治と私」(木村久邇典、小峯書店 昭和51)を購入する。

 2冊とも小山清に関する随筆が目当て。特に菊田氏の本は「死のかげの谷」「かたこと」「なつかしさと強さと」「『二人の友』寸評」と40ページほどの分量があり、読み応えがある。

「死のかげの谷」によると、小山は失語症を発病する2,3年前から作家としての「息切れ」を感じさせ、筆力が落ちたらしい。信州の宿坊に1週間泊まり込んでも1行も書けず、またせっかく書いた原稿200枚ほどを全部自宅の庭先で焼いてボツにしたこともあったらしい。

「かたこと」は、小山が生前、失語症に陥って妻にも先立たれた作家としての生活記を頼まれ、執筆のできない小山に代わって菊田が代筆したものである。この文章は「婦人公論」誌上に発表したということだが、惜しいことに発行号数までは記していない。初出がきちんと明記してあれば、助かるのだが。

「なつかしさと強さと」では、菊田の小山観が書かれてある。これは戸石泰一の小山観に通じるところがあり、非常に興味深い。これについてはまたの機会に書きたいと思う。

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小山清と田中英光
『青い波がくずれる』(戸石泰一 昭和47)に、小山清と田中英光をめぐる面白いエピソードが出てくる。

「英光はかつて、太宰について書いた小説の中に『むかし藤村の書生としていたとかいう小川君という老文学書生』と小山君のことを書いたことがある。小山君は、これについてかなりこだわっていた。『私はむかし島崎先生に大変お世話になったことがあるが、書生をしていたというわけではない。私はあれを読んで、田中君も、もう少し書きようがありそうなものだという気がした』と小山君は書いているが、口に出して、不満そうに言うのも、何度か聞いた。」

まず、小山の不満の元になった英光の作品は何だろうか、という疑問が湧いてくる。これはいずれ調べてみたい。

小山は英光に対してかなりの対抗意識をもっていたようだ。二人の歩みをながめてみると面白い。

小山は英光よりも2歳年上だが、英光のほうが文壇デビューは早く『オリンポスの果実』で戦争中に池谷信三郎賞を受賞している。その頃、小山は太宰からその才能は認められ、「文学界」や「新潮」に小山作品が掲載されるよう太宰により出版社側に働きかけがなされていたが、その努力はみのっていない。

その後昭和22年1月、小山は炭坑夫として夕張に向かうことになる。その年の9月に「東北文学」に小山の『離合』が掲載されることになるが、所詮地方雑誌での発表ということで華々しいものではなかった。

その頃の小山は、炭坑での激しい労働に耐えられず休職状態であり、麻雀賭博にはまっていた。元手をつくるため借金まで作り、『離合』の稿料も賭博のためにすぐに消えている。荒れた生活のために心の余裕がなく、初めて得た稿料もそれほど嬉しくなかったらしい。

しかしその後小山は、『聖アンデルセン』(「表現」昭和23年2月)、『その人』(「八雲」同年6月)、『メフィスト』(「東北文学」同年8月)と次々と発表する。23年9月には夕張炭鉱を退職し、翌月帰京した後も、『わが師への書』(「東北文学」同年11月)、『前途なほ』(「表現」昭和24年3月)と続く。

そして、英光が自殺した昭和24年11月の月号に、ついに「文学界」誌上に『西隣塾記』を、「人間」秋季増刊号に代表作の一つである『朴歯の下駄』を発表したのである。

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小山清と戸石泰一
小山清に関する本、
『青い波がくずれる』(戸石泰一 東邦出版社 昭和47)収録の『そのころ 小山清のこと』
『阿川弘之全集 第十六巻』(新潮社 平18)収録の『小山清の死』
『新戯作者論』(庄司肇 南窓社 昭和48)収録の『涼風のなか生きており(小山清論)』
を読む。

ゆっくり味わいながら読む。どの作品からも小山の一面を知ることができ興味深かったが、特に『青い波がくずれる』は面白かった。戸石泰一は小山と同じく太宰治の弟子だが、小山との親交と離反が率直に描かれている。

例えば、次のくだりにはドキッとさせられる。
「『朴歯の下駄』は、吉原と遊女を書いて、少しも浮ついたところのない、地味にくすんだ、しかし暖かい色合いの小説であった。それはいわば小山君の人柄がにじみでているといってよい。だが、小山君のいろいろな側面を知るにつれて、その「人柄通り」というところが、気になるのだった。小山君は、「誠実」であり「篤実」と人からも思われているところに、のっかって、仕事をしているのではないかと、思われたのだ。」

戸石は「あとがき」で、小山君についてはまだ書きたいことがあり別に評伝あるいは評論を書かねばならないと思っていると記しているが、そのような作品はその後書かれていないところをみると非常に残念である。

小山は若い頃、島崎藤村の紹介により日本ペンクラブの書記となったが公金を使い込み服役した経験をもつ。戸石はこの書で、小山と島崎との関係についてはかなり深い事情を知っているがここではあえて書かない、と伏せている。これは惜しい。公金使い込みをめぐる一連の事実を調べる重要な情報源が絶たれたわけだ。

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失語症作家の作品
「新・ちくま文学の森16 心にのこった話」(筑摩書房、1996)に小山清の「老人と鳩」が収録されている。

これは小山が失語症を患ってから完成させた唯一の作品である。(もう一つの作品「老人と孤独な娘」は絶筆に終わっている)

病気のために、思うように文章が書けない。そのためにこの作品は短い文の連続によって構成されている。一文一文かみ締めながら読んでいくと、行間にあふれ出てくる詩情に心を打たれる。

荒川洋治は、「人間の言葉としては究極の短いあいさつだけでなりたつ世にも美しい掌編」と評価している。

この作品の中である映画について触れられている。探偵ものの洋画で半身不随のろうあの老女がむごい仕打ちで殺される、という作品だ。これは実在の映画なのだろうか。

映画好きの小山の作品にはたまに映画についての話が出てくる。タイトルを言わずにストーリーだけ触れていることが多いが、「何の映画なんだろ?」と気になる。暇を見つけてしらべてみようと思う。

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小山清の作品にでてくる古本屋(ゴタ派)
古本屋を舞台とした小説、小山清の『ゴタ派』を読む。主役の啓吉は場末の古本屋の居候兼店番という設定。その店の様子がいかしている。

「主人が不精をしてろくに店の掃除などせず、また開店以来ほとんど手入れをしていないので本棚など傾いていたのだが、そういえば、その乱雑で汚れている混沌とした雰囲気にはなにかよそいきでない、しっとりとした落着があった。この店には看板もなかった。けれども、ひとめ見れば古本屋だということはわかる。」

と、まあ、なんとも味のある古本屋なわけだ。「なにかよそいきでない、しっとりとした落着」という表現は好きだ。さらに、次の一文には笑える。

「私(啓吉)が店の掃除をしていたら、主人はあわてて『いい加減にしといてくれ。あまりきれいにしないでくれ』と言った」

同業者から言わせると「その店の乱雑で汚れているのが反っていいのだ」ということなので、雑然とした店内で客に本を漁らせるタイプの古本屋なのだろう。あ〜なんて素敵な古本屋なのだ。私はこんな古本屋が大好きだ。

この店の常連には様々な変わり者がいる。大部屋役者、貧乏画家、イカサマ麻雀師、自称コミュニスト、三文文士、下っ端女優などなど。この連中を総称して「ゴタ派」と呼ぶ。10銭均一本のことを古本屋仲間では「ゴタ」と呼ぶそうだが、この連中も店になんとなくゴタゴタ集まってくるので「ゴタ派」と呼ぶようになった。

「ゴタ派」と啓吉、店の主人の人間模様がこの短編の内容。古本屋好きにはおすすめの作品。「小山清全集」収録。

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小山清一家の写真
「小山清全集 増補新装版」(筑摩書房、1999)がようやく手に入った。659ページのずっしりと重たい一冊。

目次を見ると、「落穂拾い」「小さな町」「犬の生活」「日々のパン」「幸福論」「二人の友」の他に、「日記抄(昭和36年)」、「房子夫人との往復書簡」も掲載されている。これは面白そう。興奮してくる。

昭和44年版の全集から増補されているのは、「捕遺」の約30ページ。「西隣塾に来て」「日本点字図書館をたづねて」など11編。

巻頭に写真が8枚ほど載っている。うち1枚は、小山一家(小山、房子夫人、長女の美穂、長男の穂太郎)が集まって撮ったもの。二人の子どもが可愛い。美穂さんは猫を抱いていてニコッと笑い、穂太郎君は母の膝の上でやんちゃな表情をしている。房子夫人は伏し目がちなので表情はよく分からないが、ふっくらとした顔の女性のようである。この後の房子夫人の悲劇のことを考えると胸が痛む。

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小山清の死に際と葬儀
「文壇挽歌物語」(大村彦次郎、筑摩書房、2001)の小山清の死に関する記述の部分を読む。

昭和40年3月6日午後二時半ごろ、地区の民生委員が連絡を受けて小山宅を訪れると、1人でコタツにうずくまっていた小山の顔にはすでに死相があらわれていた。
すぐに病院に連れて行き、院長が心臓マッサージを始めたが、すでに手遅れでまもなく亡くなった。午後の4時10分過ぎである。
死の二日前、小山は「木靴」同人の辻淳に「これからは失語症のことを小説に書くつもりだ」と話していたらしい。
小山の告別式は3月8日、無教会派の牧師の手で行われた。牧師は「小山清の死は少しも悲しいことではない、小山清よ、万歳!」と叫び、井伏鱒二は小山の文学は「花に譬えれば、牡丹の花」と追悼した。
小山清、54歳の生涯であった。

小山は三島由紀夫の「獣の戯れ」(失語症患者が出てくる小説)を「あれは失語症患者の領域には、まだ入ってないよ」と言っていたらしい。失語症の小山による「失語症文学」をぜひ読んでみたかったものだ。

しかし、この「文壇挽歌物語」は、実に内容の濃い本である。1頁内の情報量だけでもかなりのものがある。1冊読み終える頃には、多分数冊分の本を読み終えたのと同じくらいの満腹感が味わえそうだ。

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津島佑子のみた小山清
「夜のティー・パーティー」(津島佑子、人文書院、昭54)に収められている「小山清さんのこと」を読む。津島佑子が幼少の時自宅に頻繁に出入りしていた小山のことについて書いたエッセイだ。

津島佑子は言うまでもなく太宰治の娘。小山清は太宰の弟子だから津島宅に出入りしていたわけだ。

佑子は小山の印象について、

「なんだかとても変わった人で、青年のようでもあり年寄りのようでもあり、いつも暇そうで、映画ばかり見ていて、当時の私には不可解な人物」と言っている。

また「話し下手で、くどくどと同じことを話し続けるにしては、なにを言っているのかよく分からない人」とも言っており(小山には失礼だが)思わず笑ってしまう。

アンデルセンを愛していた小山は佑子に「人魚姫」の本をプレゼントしたそうだ。

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小山清の遺児の消息
「春風落月」(阿川弘之、講談社 2002)を読む。収められている「小山清の結婚記念写真」という随筆が目当て。

この小文に、小山清の遺児の消息が記してある。お母さん(つまり清の妻)に死なれ、さらにお父さん(清)にも死なれた幼い息子と娘は、お母さんの実家に引き取られていったということだ。

その後、娘の美穂さんは立派に成人され元気な様子、そして息子の穂太郎さんは東京芸術大学美術学部准教授となり、現代美術の世界では著名な存在になっているということだ。

お父さんの芸術的な血は息子さんにも受け継がれているということか。

ちなみに、阿川氏は「展望 昭和40年5月号」に小山の追悼文を寄せている。彼の全集の第16巻にも所収されているということなので読んでみたい。

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小山清と坪内祐三
「雑読系」(坪内祐三、晶文社、2003)「小山清全集 増補新装版」(筑摩書房、1999)の書評が載っているという情報を聞きつけさっそく本書を読んでみる。

坪内氏もかなりの小山清ファンということで、彼の作品に対する愛情がひしひしと伝わってくる文章だ。

本文を読んで、初めて知ったことは、
・「落穂拾い」の冒頭に触れてある「ある老詩人」とは永井荷風のことである。
「小山清全集」(筑摩書房 1969)は、めったに古本屋で出ず、古書価が上昇し一時期は3万円くらいまでになった。(1999年に増補新装版が出た後に恐らく古書価が下がったのだろうと思われる。1969年版の現在の相場は1万2千円ほど)
「風貌 太宰治のこと」(小山 清、津軽書房、平9)の書評を坪内氏が「週刊朝日」に書いている。(今度探してみよう)

ちなみに坪内氏は、彼の三千冊以上ある文庫コレクションの中でベスト10を選ぶならその1冊に「落穂拾い・雪の宿」(旺文社文庫)を入れると記している。

この文庫は、小説だけではなく随筆も収められており、1巻本の「小山清選集」をいう考え方により編まれているということだ。

ぜひ手に入れてみたい文庫だが、「日本の古本屋」には現時点では出品されていない。

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孤獨な作家小山清
今日もまた小山清の話。

「荻窪風土記」(井伏鱒二、新潮社、S57)の「小山清の孤独」の章で井伏は、小山主宰「木靴」の同人でパン屋さんをやっていた辻淳さんという人についてふれている。小山の家族とも付き合いあった人のようだ。この辻さんの手による小山に関する文章はないかと調べてみると、「新潮 昭和40年5月号」(新潮社)の中で彼の筆による「孤獨な作家小山清」と題する随筆らしきものがあった。ぜひ読んでみたい。

さらに雑誌関係で小山に関する記事がないか調べてみると、「婦人公論 昭和37年7月号」(中央公論社)に「小山清 妻を死に追いやった私の悔恨」という記事があった。自死した妻に関する内容だろう。これもまた興味深い。

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小山清の世界に溺れる
「小さな町」(小山清 みすず書房 2006)を耽読する。

素晴らしい、素晴らしすぎる。こんな凄い作家がいたなんて。

ささやかながらも清潔な倫理感に貫かれた小山清の小宇宙が味わえる。

ここまで自分の気持ちにピタッと寄り添ってくるような小説は珍しい。こうなったら彼の作品をすべて読んでみたい。

「小山清全集」(筑摩書房 1999)の定価は12,600円。ちと高すぎる。「日本の古本屋」でもほぼ定価どおりの値付け。近くの図書館にも置いていないが、国民の権利により購入依頼することができるので、今度頼んでみることにしよう。

小山清の研究本はないのだろうか。ネット上でいろいろと検索してみたが、それらしいものは出てこない。でも研究している人はいるはずだ。誰か知っている方は情報を提供していただければありがたいです。

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小山清の作品にでてくる古本屋(落穂拾ひ)
「日日の麺麭(パン)・風貌―小山清作品集」(講談社文芸文庫)に収められている「落穂拾ひ」(昭和27年作品)を読む。

この作品の中に、「緑陰書房」という古本屋が出てくる。高校を卒業したばかりの20歳前の女性が1人で経営している店で、彼女は「勤め人」が向いてないとの理由でこの商売をしている。建場や市から仕入れた本を廉い値段で売っており、小山はもっぱら均一本を買う客だ。

そんな彼女と小山とのさりげない交流が描かれている。実にいい作品だ。

実際、「緑陰書房」という古本屋があったかどうかは分からない。そのモデルとなるような店や女性店主がいたのかも知れない。(知っている人がいれば教えてください)

ちなみに「落窪風土記」(井伏鱒二、新潮社、1982)によると、小山が古本屋で買うのはこの小説どおり、たいてい均一本だったらしい。

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